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ほのぼの○○……
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麻衣「あと何ページ?」
大江「1ページ……」
麻衣「さっきの話のつづきだけどさぁ」
大江(どの話?)
麻衣「彼女がいないっていうのはわかるけど、好きな人はどうなの? いるの?」
大江「うう……またしてもペンがとまらざるをえない話題だなぁ」
麻衣「待って! 当ててみせる! じゃじゃーん……ズバリ望月さん、でしょ?」
大江「ちょっ! なっ、なにそれ、なんで……マジでやめてよ!」
麻衣「あらら、当てずっぽうだったのに、これほど分かりやすい反応をするとは」
大江「……もう英語の宿題やめたっ! 帰る!」
麻衣「いいよ、あと1ページぐらい自分でできるから」
大江(ガーン! 脅しの効果まったくゼロ……)
麻衣「まあねえ……大江くんの気持ちはわかるわ。あれだけ可愛くて、柔道も強けりゃねぇ」
大江「……」
麻衣「大江くんが望月さん派と知って、麻衣的にはちょっとショックかな〜」
大江「え?……」
麻衣「大江くん、手を握っていいかな?……」
大江「えっ、えっ……??」

麻衣の手は小さくてやわらかかった。小指など仮名筆の穂先のようだった。

大江「(どきん! どきん!)ま、麻衣ちゃん……」
麻衣「どう?」
大江「どうって……」
麻衣「痛い?」
大江「痛くなんかないけど……」
麻衣「ちぇ、まだダメか」
大江「ダメってなにが?」
麻衣「合宿のとき、望月さんにギューッてされた手がいまだに痛くてさぁ。
   今度会ったときに復讐してやろうと握力をきたえてるんだけど、全然ダメじゃね?」

ほのぼのとめはね……
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大江「ボ、ぼくのプライバシーばっかり詮索するけどさ、そっちこそどうなのさ!」
麻衣「なにが?」
大江「麻衣ちゃんこそ好きな人がいるならば、は、白状しろよなっ!」
麻衣「いるよー、勅使河原くん!」
大江「……ううっ、そんなアッサリと」
麻衣「鵠沼の書道部って半分は勅使河原ファンだよ。わたしもカレ目的で急きょ入部したんだもん」
大江「そうなんだ。まあ、あるていど予想はつくとはいえ……」
麻衣「なに肩をずどーんと落としているの?」
大江「いや……やっぱり男は顔なのかなあと思って」
麻衣「ま、若いうちは顔でしょ。もうちょっと歳とったら経済力とか考えるけどさ」
大江「シビアなご意見」
麻衣「なによぅ。大江くんだって望月さんのかわいさに惚れたんでしょうに」
大江「う〜ん。というか、日本に帰ってきて初めて話しかけてくれた女の子が彼女だったから……」
麻衣「カモの刷り込みかよ……」
大江「か、加茂? 違うよ、望月さんだってば」
麻衣「だからそう云ってるじゃん。まあとにかく、これで我々二人の共通項が明らかになったわね」
大江「共通項?」
麻衣「二人とも面食いで、片思いで、書道にかこつけて異性の尻を追いかけている、と」
大江「それはちょっと語弊があるのでは……」
麻衣「だからねえ、これからは共同戦線でいくべきなのよ!」
大江「共同戦線?」
麻衣「たがいの恋を応援しあい、協力を惜しまず、共通の敵と戦っていくのよ! オーケー墨汁?」
大江「はあ……」
麻衣「眠そうな目で答えないで! ところで英語おわった?」
大江「いちおうなんとか……」
麻衣「じゃあ、お店、5時から夜の部がはじまるからヨロシクね」
大江「え? 昼だけの契約のはずでは……」
麻衣「友達と遊びいく約束しちゃったの。あたしのかわりにホールできるの
   大江くんしかいないからさあ。協力は惜しまないってさっき誓ったよね?」
大江「……」

ほのぼのとめはね……

大江「ありがとうございました〜……」
麻衣「お父さん、さいごのお客さん帰ったよ」
店主「おう、おつかれ! とくに大江くんは夜の部まで働いてくれてアリガトな」
大江「いえ。働くのは楽しいです」
麻衣「大江くんのおかげで、麻衣もラクだったよ!」
大江「そう? はは……。でも麻衣ちゃんが途中で帰ってきてくれなかったらヤバかったよ」
麻衣「だってさあ、やっぱり大江くんだけ働かしてると思うと気が引けちゃって」

大江(麻衣ちゃんって、加茂三輪を足したより凶悪な子かと思ったけど、そうでもなかった)
大江(朝から一日タイヘンだったけど、宮田家の人たちイイ人ばかりでよかったよ……)

店主「大江くん、おなか減ったろう。まかないを食べていきなよ」
大江「えっ、いいんですか! よろこんでいただきます」
麻衣「じゃあ、ちゃちゃっと後片付けしちゃお! 大江くん、のれんをしまってくれる?」

ゆかりは、のれんをおろすと、それをポカンとながめた。

大江「麻衣ちゃん……これなんて書いてあるの? き・なんたら・む゛?」
麻衣「ああ、のれんに書いてある字? ぷっ、くすくす……まあ帰国子女にはむずかしいか」
大江「草書なのかな。勢いがあって達筆だということはわかるけど」
麻衣「それはね……くすくす、ねえお父さん、これ何て読むんだっけ?」
店主「それはな「桃李言わざれども下おのずから蹊を成す」と云って司馬遷の言葉だ。ぷぷ……」
麻衣「意味はね、イイ人のもとには、おのずと人が集まってくるというか……うふ」
大江「へえ……この宮田そばにピッタリの言葉ですねぇ」
父娘「うわっはっはっは!」
大江「ボク決めました。これを書の甲子園に出すことにします」
麻衣「ひーひー……もうやめて……笑い過ぎて死にそう……」
大江「?」
店主「さあ、南蛮そばができあがったぞ。さめないうちに二人ともおあがんなさい」
二人「わーい、いただきまーす」

バイト二日目編・完 ほのぼのとめはね……

三輪「加茂ちゃん、着替え終わった〜?」
加茂「もうちょい。鍋ふってるからエプロンがベッタベタだよ」
三輪「昼間きたサーファーのお客さんがさ、このあとカラオケ行かないか?だって」
加茂「うう〜、わたしはパス」
三輪「なんでぇ。けっこうイケメンだったのに。もったいない……」
加茂「なんだかね。そういう気分になれなくて……。さっ、お待たせ。帰ろ」

三輪「……あ〜あ。加茂ちゃん、最近、合宿終わってから元気がないじゃん」
加茂「そうかな……」
三輪「オトコ作る目的で海の家のバイトを決めたのに、ぜんぜんノリ気ないしさ」
加茂「ごめんよ。わたし海の家やめようかなあ……」
三輪「……ずいぶんとコレは重症だわね」
加茂「べつに病気とは違うよ」
三輪「いいのよ隠さないで。お見通しなんだから——ゆかりちゃんでしょ」
加茂「うっ……」
三輪「キモチは分かるよ。あたしですら、ここんトコあの子の顔が見れなくて寂しいもん」
加茂「そうなんだよ! アイツにパンを買ってきてもらわないと、どうも調子が……」
三輪「ゴマかさないの! 親友でしょ。一学期からとっくに気づいてたわよ」
加茂「三輪ちゃんにはかなわねーなー……」
三輪「なんで合宿の時コクらなかったの? 花火のときとかチャンスあったでしょ」
加茂「告白なんてめっそうもない。あたしはゆかりに恐怖しか与えてないし」
三輪「望月さんに遠慮してるとか? ほっといたらあの二人くっついちゃうよ」
加茂「そうなったらそうでイイよ……もうやめよーよ、この話は」
三輪「……そうだ! あした海の家さぼって、ゆかりちゃん家に遊びにイコー!」
加茂「え?……」
三輪「同じ部の仲間が遊びにいくぐらい、どうってことないでしょ。命短し恋せよ乙女よ、加茂ちゃん」
加茂「そうか……そうだねぇ。そんぐらいならイイっか! よーしスイカ持っていこ」

そのころ宮田庵……
大江「麻衣ちゃん、明日ボクん家で英語の勉強しない? クーラーあるし、おバアちゃんも会いたいって」
麻衣「あっ、いくいく! メロン持ってくよ!」

ほのぼのとめはね……

加茂(くそっ、このスイカけっこう重いな。ふぅふぅ)
加茂(三輪ちゃんたら、当日の朝になって急におなかが痛いから行けないだなんて……)
加茂(……もしかしたら私とゆかりを二人っきりにしようと気を使ったのかな?)
加茂(かえって二人きりのほうが気まずいんですけど……)
加茂(あー、やっとゆかりの家が見えてきたよ、ふぅふぅ)

加茂「おーおーえーくーーん! あーそーぼー!」

祖母「あら? ゆかりのお友達……?」
加茂「あっ、おばあちゃん、お久しぶりです。加茂と申します。ホラ、藤沢駅まえのイベントで……」
祖母「ああ、書道部の方。……ごめんなさいね、いま、ゆかり留守なのよ」
加茂「えっ……(ガーン)」
祖母「でも、きょうのバイトはランチだけって云ってたから、ぼちぼち帰ってくると思うけど」
加茂「バ、バイトしてるんですか? あのゆか……大江くんが」
祖母「そういえば、お友達が遊びにくるって話してたっけ。さあさあ、どうぞあがって」
加茂「?? おじゃまします……あっ、コレつまらないもんですが」
祖母「まあまあ、ずいぶん立派なスイカね。重かったでしょう」
加茂「冷やす場所ってありますか?」
祖母「冷蔵庫には入りきらないしねぇ。お風呂場に水を張って冷やしましょうか」
加茂「重たいですから私が運びますよ……お風呂場こっちですか?」

そのころ、ゆかりの父・義之は、裸でリラックスしていた。

義之「あー、金はないし仕事もない」
義之「こんなクソ暑い日は、家で水風呂に入ってんのが一番だな〜」
義之「あれ……ゆかりがもう帰ってきたのかな? おーい一緒に入ろうぜ、相棒」
加茂「ぎぃやぁぁぁぁ!!! 変態ぃぃぃ!!」
義之「げっ! なんでピンクレディのケイちゃんがうちに……!」

スイカは加茂の手から落ちて、ぐちゃぐちゃに砕けちった……

ほのぼのとめはね……
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