大江「ありがとうございました〜……」
麻衣「お父さん、さいごのお客さん帰ったよ」
店主「おう、おつかれ! とくに大江くんは夜の部まで働いてくれてアリガトな」
大江「いえ。働くのは楽しいです」
麻衣「大江くんのおかげで、麻衣もラクだったよ!」
大江「そう? はは……。でも麻衣ちゃんが途中で帰ってきてくれなかったらヤバかったよ」
麻衣「だってさあ、やっぱり大江くんだけ働かしてると思うと気が引けちゃって」
大江(麻衣ちゃんって、加茂三輪を足したより凶悪な子かと思ったけど、そうでもなかった)
大江(朝から一日タイヘンだったけど、宮田家の人たちイイ人ばかりでよかったよ……)
店主「大江くん、おなか減ったろう。まかないを食べていきなよ」
大江「えっ、いいんですか! よろこんでいただきます」
麻衣「じゃあ、ちゃちゃっと後片付けしちゃお! 大江くん、のれんをしまってくれる?」
ゆかりは、のれんをおろすと、それをポカンとながめた。
大江「麻衣ちゃん……これなんて書いてあるの? き・なんたら・む゛?」
麻衣「ああ、のれんに書いてある字? ぷっ、くすくす……まあ帰国子女にはむずかしいか」
大江「草書なのかな。勢いがあって達筆だということはわかるけど」
麻衣「それはね……くすくす、ねえお父さん、これ何て読むんだっけ?」
店主「それはな「桃李言わざれども下おのずから蹊を成す」と云って司馬遷の言葉だ。ぷぷ……」
麻衣「意味はね、イイ人のもとには、おのずと人が集まってくるというか……うふ」
大江「へえ……この宮田そばにピッタリの言葉ですねぇ」
父娘「うわっはっはっは!」
大江「ボク決めました。これを書の甲子園に出すことにします」
麻衣「ひーひー……もうやめて……笑い過ぎて死にそう……」
大江「?」
店主「さあ、南蛮そばができあがったぞ。さめないうちに二人ともおあがんなさい」
二人「わーい、いただきまーす」
バイト二日目編・完 ほのぼのとめはね……
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