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ほのぼの○○……
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望月「おつかれー」
大江「あ、おつかれさま」
望月「あれ、まっすぐ帰るンだ?」
大江「そのつもりだけど……なんで?」
望月「きょうは宮田ソバでバイトじゃないんだ、ふーん」
大江「ううッ……」

昇降口のそとは、雨がしとしと……

大江「ああ、よかった。折り畳みもってきといて」
望月「……」
大江「え、望月さん、もしかして傘ないの?」
望月「平気よ、こんぐらいの雨なら走って帰る!」
大江「だめだよ。インターハイ前の大事な身なんだから」
望月「うえッ。特別扱いみたいなのはヤメてよね」
大江「違う違う。これで風邪でもひかれたら、また書道部のせいだって柔道部に怒鳴りこまれるっての」
望月「それはおおいにありそうだけど……」
大江「傘は天下のまわりもの、ってコトワザなかったっけ、日本語で」
望月「まあ、たしかに間違ってなくもない」
大江「だからさ、ホラ!」

大江が傘をさしだすのを、望月はニコっと笑って受けとった。
そこにだけ日が差したような笑顔だった。

望月「ありがとう! あしたは柔道部の練習だから、あさって返すね! バイバイ!」

大江(あれ……えーと……いっしょに相合い傘して帰るんじゃなかったのか?)

ほのぼのとめはね……
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ひろみ「ねぇ、よしみン、起きてる……?」
よしみ「……寝てます」
ひろみ「起きてるじゃない。入るわよ」
よしみ「いまやっと寝入ったトコなんだよ!」
ひろみ「ねーねー、いっしょに寝よ……」
よしみ「お断り。ひろみの寝相の悪さときたら」
ひろみ「イイでしょ、イイでしょ」
よしみ「強引にベッドに入ってくるなっての!」
ひろみ「わー、よしみの布団あったか〜い」
よしみ「ギャーっ、冷たい! おまえの手足は冷えピタか!」
ひろみ「小さいころはよく一緒に抱きあって寝てたじゃない」
よしみ「小さいころは小さいころ。いまはプライバシーを尊重する17歳同士としてだな……」
ひろみ「アレッ、よしみン、また胸が成長したんじゃない?」
よしみ「パジャマのなかまで手をつっこんでくんな! 心臓マヒおこすわ」
ひろみ「それより、よしみン聞いてよ。すっごい怖い夢を見たの……」
よしみ「ひとの話にゃ、まったく聞く耳なしかよ」
ひろみ「うちの書道部がね、まず望月さんが柔道が忙しくなって辞めちゃって……」
よしみ「ああ、あの初心者の一年生ね」
ひろみ「加茂ちゃんと三輪ちゃんもいなくなって、とうとう大江くんと私だけになって廃部に……」
よしみ「ぶわっはっは。あながち夢だけとも限らない話じゃないか」
ひろみ「それで怖くて泣きながら目を覚ましたの……お願いだから、いっしょに寝て。ね?」
よしみ「ちっ……しょうがねぇなあ。今夜だけだぞ」
ひろみ「……ぐー」
よしみ「はやっ!」

妹は、姉の体にそっと毛布をかけてやった。

よしみ「こうしてスヤスヤ寝息をたててる分には、たしかに天使なんだがなぁ」
ひろみ「……むにゃむにゃ……イヤぁン、やめてよゥ、勅使河原クン……」
よしみ「こっ、こいつは……うらやましい夢を見やがって……!」

ほのぼのとめはね……

ある日の部室……

加茂「なあ……望月よ」
望月「なんですか?」
加茂「ふと思ったンだが、なんでおまえ柔道なんて始めたんだ?」
三輪「あ、アタシもひそかに気になってた」
日野「そういえば女の子にしては珍しいわよね」
大江「……(臨書するフリしながら聞き耳をたてている)」
望月「えー、きっかけですか? いや、たいしたコトはないっスけど……」
加茂「もったいぶるなよ」
三輪「道場にカッコいい男の子がいたとか?」
日野「もしかして、いつぞやのラブレターの差出し人ってその人だったりして!?」
大江「部長さん、目をキラキラさせすぎです……」
望月「そんなんと違いますよー。きっかけは、あるマンガです」
加茂「マンガ……柔道部物語か?」
望月「あんな汗臭そうな男子柔道部に憧れるワケないじゃないですか……」
三輪「あ、わかった。YAWARA!じゃない? 女子柔道といえば」
望月「ブブー。私は制服で人を投げ飛ばして、下着を見せるようなコトはしません」
日野「女子柔道なら、そばっかすっていうのもあったよね。週刊チャンピオンで」
望月「ソバ屋の娘が主人公のやつですよね……わたしソバ屋の娘ってキライなんですよ」
大江「えーと、ぷりんせすARMYだと思うんだけど……少女コミックの」
加茂「なんで男のおまえがそんなタイトルを知ってるンだよ」
望月「というか、だれも花マル伝をあげないのは何ゆえですか……ヤンサンなのに……」
三輪「えっ、花マル伝なの? きっかけ」
望月「いや、ぶっちゃけ、ちゃいますけど……」
日野「柔道一直線? コータローまかりとおる? 柔道愚連隊?」
加茂「ひかるチャチャチャ? ドカベン? いなかっぺ大将?」
三輪「そういえばスラムダンクの最初のほうでも柔道やってなかったっけ?」

望月「あのー、みなさん、そこまでマイナーなとこ挙げられるのに、なぜ肝心な一作を……」

ほのぼのとめはね……

三輪「あんたバカねぇ……」
望月「えッ」
日野「デジカメで撮ったんだから、セロテープなんか使わなくてもいくらでもプリントできるのに」
望月「そうなんですか……」
加茂「おおかた、ゆかりのヤツ、ちょっと傷ついているフリがしたくて大げさに破いたンじゃねーの?」
望月「わたしに見せるため……にですか? わざわざ」
日野「あの子、口数少ないかわりに、行動で人の気をひくのが得意だからね」
望月「そういわれてみれば……」
三輪「だって私、5枚もプリントしたのよ」
加茂「そんなにもらって、なんに使うンだろーな?」
望月「……」

そのころ宮田庵……

大江「ボクは書道なんか向いていないンだッ……!」 びりびりッ
宮田「あっ、だめだよ、大江くんッ」

ほのぼのとめはね……
望月「あッ、先輩たち! こっちですよ早く早く〜!」
加茂「おう、悪い悪い、待たせたな」
望月「あと五分でエントリー終了だから、急いでくださいッ」
三輪「だって広くて複雑なんだもの、この体育館……思ってたより出場者も多いみたいだしさー」
望月「県下のおもだった女子部はほとんど集まってますからね」
日野「ねえねえ、望月さん、この恰好でおかしくないかしら?」
望月「道衣は女でも右前ですよ! 帯は後ろじゃなくて、前で縛ります……こうやってギュッと!」
日野「あ、ありがと……ちょっと苦しい……」
望月「あと、くれぐれも試合中は眼鏡を外してくださいね」
加茂「なあ、望月、やっぱり毒霧は反則かな?」
望月「ダメに決まってるでしょ! プロレスじゃないンだから!」
日野(こ……怖い……)
三輪「もう〜、望月さんたら書道部のときとテンション変わりすぎ……」
望月「試合前なのに、墨を擦るときみたいにノホホンと落ち着いていられますかッ」
加茂「んなテンパらなくても、望月だったら全部一本勝ちで勝ち抜けるだろー?」
望月「だーかーらー! きょうの県大会は団体戦だって何度云えば」
三輪「体重がうちらの倍もありそうな選手がゴロゴロいるんでしょう……何度も聞いたわよ」
加茂「先輩たちにはケガさせないように、自分が全て倒しますって、お前が云ったンだぞ、望月」
望月「まあ確かに、急にムリなお願いしたのは私ですけれど……」
日野「たいへんよね……大会直前に正規の女子部員がみんな新型インフルエンザで倒れちゃうなんて……」
加茂「柔道部でピンピンしてるの、おまえだけなんだって? あはは」
望月「悪かったですね、健康だけがとりえで」
三輪「ま、書道部として、柔道部のヒゲ顧問に貸しを作っておくのは悪くないコトよね」
望月「……というか、あと一人はまだですか!? 団体戦は五人で戦うンですよ」
加茂「あ、来たみたいだぞ……おーい、ゆかり、こっちこっち!」
大江「シーっ! 先輩、大きな声で呼ばないでくださいよ……」
三輪「誰も男子の名前だなんて思わないわよ、ねっ、ゆかりちゃん(ハート)」
日野「メイクとカツラがすごくお似合いよ大江くん……ぷっ……くっくっくっ……」
大江(ああ……願わくば、きょうは誰とも知り合いに会いませんように……)
一同「じゃあ行くぞー、鈴高書道部! ……じゃなくて柔道部! えいえいおーッ」

ほのぼのとめはね……
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