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ほのぼの○○……
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加茂「えーと、二段階右折は、と」
三輪「速度40キロのとき制動距離は……ぶつぶつ」

大江「あれ、先輩がた、勉強ですか? 学校の教科書とちがいますね」
加茂「おう、ゆかり。おまえも一緒に試験を受けにいくか? 原付免許」
大江「残念ながらぼくまだ15歳なんで。バイクですか、いいなー」
三輪「バイトでお金たまったら、かわいいの買おうと思っててね」
大江「なに買う予定なんですか」
三輪「vino。オレンジの」
加茂「わたしはリトルカブ」
大江「リトルってガラですか? 配達用のスーパーカブのほうが似合いそうな」
加茂「ひき殺されてーか?」
大江「え、えーと……。あっ! 部長さんとは一緒に試験にいかないんですか?」
三輪「あー、あの子はね自転車すら乗れないから」
大江(も、萌え〜)
加茂「でも一輪車には乗れるんだよな。これがまた見事な腕前で」
三輪「小さい時、よしみと一緒に「一輪車に乗りながら習字する天才姉妹!」ってテレビ出てた」
大江「それはまた……いろんな意味でレアですね」

望月「ちゃーす! 先輩たち、なんの話ですか」
加茂「おう、望月。おまえはバイク乗る気ないのか?」
望月「バイクならいつも乗ってますよ。きょうも乗ってきました」
加茂「あれは足で漕ぐヤツだろう。ママチャリの話してんじゃないんだから」
望月「ママチャリといっしょにしないでください。あれ100万もするんですから」
加茂「まじ!?」
望月「全日本の賞金とか、テレビの出演料で買っちゃいました。あははー」
大江(そんなスゴいものをよくカギもかけずに駅前に放置してるよな……)
三輪「うちらが話しているのは自動二輪なのよ。望月さん16でしょ。免許とらないの?」
望月「あー、エンジンつきのバイクは危ないって、全日本柔道の理事会から禁止されちゃってて」
三輪「さすが国民的アスリートはあつかいが違うわね」
望月「でもいいンです! 将来は自衛隊に就職して、そこで大特とかもらえますから! あはは」
大江「せ、戦闘民族……」

ほのぼのとめはね……
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加茂「くそっ……くそっ……」
大江「おっと。加茂先輩が毒づきながら歩いている。遠回りして帰ろう……」

加茂「おっ、ゆかりじゃねーか。ちっと来い」
大江「ああ、災難の予感……はい、なんでしょうか、先輩」
加茂「おまえ、いまから神奈川運転免許試験場にもぐりこんで受験料とりかえしてこい」
大江「不二子ちゃんみたいな無理をいわないでください! ……落ちたんですか」
加茂「わたしのリトルカブちゃんが逃げてった……」
大江「いっしょに受けた三輪先輩は?」
加茂「ふん、あいつは要領いいからよ。藤沢まで帰ってきたら、その足でバイク屋直行だよ」
大江「よかったですね」
加茂「よかねーよ! 知ってるか、二人で試験いって、一人しか受からなかったときの悲劇を?」
大江「なんですかそれ」
加茂「受かったほうはよ、写真撮影だ実技講習だで、そのあと二時間ぐらい拘束されるんだ」
大江「はあ」
加茂「で、落ちたほうはよ、それが終わるのを廊下で無為にジーっと待ってなきゃいけねぇんだ!」
大江「はははー!」
加茂「笑い事じゃないっての。黙ってひとりで帰るわけにもいかねーしよ」
大江「やさしいですね、いいヒトすぎますよ先輩」
加茂「おまえ適当にヒトのこと持ちあげて、さっさとこの場を切りあげようとしてないか?」
大江(するどい……その直感力をなぜ試験にいかせないのだろう?)
加茂「まあ、いいや。ゆかり、おまえ明日から教習所に入学な」
大江「はあ!?」
加茂「もう自力でバイクに乗るのはあきらめた。おまえのうしろに乗ることにする」
大江「やっぱり災難だったか……」
加茂「入学料とバイクの頭金だけは出してやる。あとは自分で払えな。自分の免許なんだから」
大江「でもぼくまだ15歳ですし」
加茂「いまから通えば16の誕生日にピッタリだろ。バイク乗りはモテるぞ〜」
大江(たしかに望月さんをタンデムに乗せるのも悪くないな……)「やります! やります!」
加茂「よっしゃ、その意気だ! 最短二週間コースで目指せ、合格!」
大江「おおー!!」

免許取得後1年たたないと二人乗りできないことを、彼らは知らない……
ほのぼのとめはね……

ガリガリ……ゴリゴリ……

影山「……」
大江「……」
影山「遅いなあ、望月……」
大江「そうですね……」
影山「女の子が柔道なんてよくやるよなあ」
大江「はあ」
影山「……彫れた?」
大江「もうちょっとです」
影山「急がなくていいんだけどね……夏休みなんてヒマだし」
大江「……」
影山「鵠沼の笠置センセイ、いまごろなにやってんのかなあ」
大江「さあ……?」
影山「あのminiクーパーの男と海でも行ってんのかな。あーあ」
大江「やっぱり付きあってるんですかね、あの二人」
影山「付きあってないワケないでしょ。お寺に迎えにくるぐらいだよ」
大江「そうですね」
影山「ボクもフェアレディZでも買おうかな。いま乗ってるのスズキの軽だからさ」
大江「……」
影山「……そういえばさあ」
大江「なんですか?」
影山「どうして大江は世界史をとらなかったん?」
大江「あっ、スイマセン、影山先生の授業を選択してなくて」
影山「いや、べつに非難してるわけじゃなくて、ちょっと訊いてみただけだから」
大江「なんというか……日本をずっと離れていたから、逆に日本の歴史をよく知りたくて」
影山「わかる、わかるよ、うん」
大江「スイマセン……」
影山「でもさあ、なんで書道部の連中は揃いも揃って世界史をとらないのだろうと思ってさ……」
大江(望月さん、はやく来て〜)

ほのぼのとめはね……

がらがらっ

加茂「こんちゃーす!」
三輪「あいかわらず暑い部室ね〜」
大江「あれぇ? 先輩たち、どうしたんですか」
加茂「海の家のバイトが終わったから、一年たちのハンコづくりがどうなったか見にきたぞ」
三輪「望月さんは来てないの?」
大江「彼女なら30分で仕上げて、とっくに帰りましたよ……」
加茂「そうかそうか、それは寂しいのう。ひっひっひ」
三輪「ゆかりちゃんも一応完成? ちょっと見せてよ……あー上手上手!」

影山「コラー! おまえたち、そんな派手な私服で学校へ来るな!」

加茂「わあ、いたのか妖怪ハゲ山」
三輪「きょうは書道しにきたわけじゃないから、固いこと云わないでよ」
影山「本来なら学校に許可をとってないバイトも禁止なんだぞ。用がないなら帰った帰った!」
加茂「ハイハイ。ゆかりを引きとったら帰りますよ」
三輪「さっ、帰り支度して、ゆかりちゃん。かき氷でも食べにいこ」
大江「え! 先輩がたのゴチですか、やったあ!」
影山「…………」
加茂「どうしたハゲ山? さびしげなヅラ……じゃなくてツラをして」
影山「うるさいっ」
三輪「あらら。先生も一緒に、かき氷、行きたいのかな?」
影山「べっ、べつにそんな……」
加茂「うちらじゃ、鵠沼の女教師のかわりになりませんが、それでもよろしくて?」
影山「あーあー、わーわー、聞こえなーい!」
大江「行きましょうよ、先生。きょうは一日ボクにつきあっていただいてありがとうございました」
影山「まあ……大江がそういうんならな……」
加茂「おっ、それならハゲ山、あのボロ軽自動車をまわしてくれよ」
三輪「校門前で待ってるから、急いでね。じゃあ行こう」
影山(くそ……がまんだがまん……)

ほっこりとめはね……

影山「気をつけて帰れよー」
大江「わざわざ送っていただいてありがとうございました。かき氷ごちそうさまです」
加茂「ばいばいきーん」

影山「……さーて、三輪ん家、大江ん家ときて、あとは加茂んトコだな」
加茂「……」
影山「戸塚のほうだっけ。なんでおまえん家だけそんなに遠いんだよ」
加茂「いいじゃんかよ……」
影山「なんだよ、二人っきりになったら急に無口になって……」
加茂「……」

影山(ちっ、女子高生は扱いづれーなー)
影山(それにしてもイイ匂いだな)
影山(もう十分カラダは大人だもんなー……)

加茂「おい、スピード落ちてるぞ」
影山「おっとっと」
加茂「権太坂ぐらい登れないのかよ、このボロくるま」
影山「うるさいなー。送ってもらってる分際で、かわいくないぞ」
加茂「……」

影山(うっ、しまった。かわいいとか、かわいくないとかいう言葉はNGだった)
影山(セクハラで訴えられたらどうしよう)
影山(なんでオレはこんな小娘ひとりにアタフタしてるんだ?)

加茂「あー、腹へった」
影山「えっ? さっきかき氷、食べたじゃん」
加茂「あれはおやつ。いま腹へってるのは夕飯」
影山「そんなこといったって、おまえ……」

加茂は助手席でゆっくりと脚を組み替えた。生のふともも……

影山「わかった。あそこの長崎ちゃんぽんにしよう……」

ほのぼのとめはね……
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