加茂「くそっ……くそっ……」
大江「おっと。加茂先輩が毒づきながら歩いている。遠回りして帰ろう……」
加茂「おっ、ゆかりじゃねーか。ちっと来い」
大江「ああ、災難の予感……はい、なんでしょうか、先輩」
加茂「おまえ、いまから神奈川運転免許試験場にもぐりこんで受験料とりかえしてこい」
大江「不二子ちゃんみたいな無理をいわないでください! ……落ちたんですか」
加茂「わたしのリトルカブちゃんが逃げてった……」
大江「いっしょに受けた三輪先輩は?」
加茂「ふん、あいつは要領いいからよ。藤沢まで帰ってきたら、その足でバイク屋直行だよ」
大江「よかったですね」
加茂「よかねーよ! 知ってるか、二人で試験いって、一人しか受からなかったときの悲劇を?」
大江「なんですかそれ」
加茂「受かったほうはよ、写真撮影だ実技講習だで、そのあと二時間ぐらい拘束されるんだ」
大江「はあ」
加茂「で、落ちたほうはよ、それが終わるのを廊下で無為にジーっと待ってなきゃいけねぇんだ!」
大江「はははー!」
加茂「笑い事じゃないっての。黙ってひとりで帰るわけにもいかねーしよ」
大江「やさしいですね、いいヒトすぎますよ先輩」
加茂「おまえ適当にヒトのこと持ちあげて、さっさとこの場を切りあげようとしてないか?」
大江(するどい……その直感力をなぜ試験にいかせないのだろう?)
加茂「まあ、いいや。ゆかり、おまえ明日から教習所に入学な」
大江「はあ!?」
加茂「もう自力でバイクに乗るのはあきらめた。おまえのうしろに乗ることにする」
大江「やっぱり災難だったか……」
加茂「入学料とバイクの頭金だけは出してやる。あとは自分で払えな。自分の免許なんだから」
大江「でもぼくまだ15歳ですし」
加茂「いまから通えば16の誕生日にピッタリだろ。バイク乗りはモテるぞ〜」
大江(たしかに望月さんをタンデムに乗せるのも悪くないな……)「やります! やります!」
加茂「よっしゃ、その意気だ! 最短二週間コースで目指せ、合格!」
大江「おおー!!」
免許取得後1年たたないと二人乗りできないことを、彼らは知らない……
ほのぼのとめはね……
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