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ほのぼの○○……
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加茂(あ〜、この押し入れのなか、めちゃ暑い……
加茂(ゆかりの布団はちと匂うし……)
加茂(やべ、汗のスイッチが入っちまった。マスカラ流れちゃうじゃん!)
加茂(こりゃ死んでも外に出るわけにはいかねーな……)

大江「……どうぞ、なにもない部屋だけど」
麻衣「おじゃましま〜す。あー、クーラーきいてて気持ちイー!」
大江「そこらへん座ってて。いま麦茶でも持ってくるから」
麻衣「おかまいなく……あれ、この落ちてるノートはナンダ? 」
大江「わっ! ボクの日記じゃないか! み、み、見ちゃダメ!」
麻衣「ごめんごめん。ぜんぜん読んでないから安心して。字、キレイだねー」
大江「やっぱり読んでるじゃないか……」
麻衣「読んでないってば! 興味ないし? あははー」
大江「ちょっとは興味もってよ! あははのはー」

加茂(ちっ……なんだよこの馴れ馴れしいカンジは!)
加茂(望月ではないよな……どっかで聞いたコトあるカンジの声なんだが)
加茂(同級生か? ゆかりをこんな屈託なく笑わせるコトができるとは……)
加茂(この謎のオンナを太陽だとすると、私は北風か……ガックシ)
加茂(あ〜、汗かきすぎて喉がカラカラになってきたよ……)

大江「麦茶どーぞ」
麻衣「ありがとう。……なんでコップが三つあるわけ?」
大江「おばあちゃんに、もってけって云われたんだけど、おかわり用かな」

加茂(アタシんだっつーの! ああ飲みて〜……)

麻衣「ゴクゴク。おいしいね。ところでさ、日記で思いついんたんだけど……交換日記しない?」
大江「こ、交換日記? ボクと麻衣ちゃんが?」
麻衣「部活のコトとかバイトのコトとか、もちろん恋のコトも……字の練習にもなるでしょ、ねっ」

加茂(う〜む、その手があったか)
加茂(私もゆかりとメール交換したかったんだけど、あいつ携帯もってねえからな……)

ほのぼのとめはね……
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麻衣「交換日記のことキマリね! じゃあ今夜から書いて、明日もってくるよーに!」
大江「うん、わかった。なに書こうかな〜」

加茂(ガルルル……)
加茂(ゆかりのヤロウ、鼻のした伸ばしやがって……見えないけど)
加茂(望月ひとすじじゃなかったのかよ!)
加茂(私は押し入れでなにをやってるんだ? なんだか泣けてくるよ……)
加茂(汗だか涙だか鼻水だかわかんないけどマスカラぐちゃぐちゃ)
加茂(くそっ、ゆかりの布団にこすりつけてやる、このスケベ野郎め、どうだっ)

大江「それでは、そろそろ英語の勉強をはじめようか?」
麻衣「あっ、教科書とノート忘れちゃった〜」
大江「はっ? ほんとうに? いったいなんのためボクの家まで……」
麻衣「あはは! いいじゃんいいじゃん今日のトコロは。遊んどこうよ」
大江「麻衣ちゃんがイイならイイけど……なにして遊ぼう」
麻衣「wiiとかないわけ?」
大江「軍人将棋がたしか押し入れに……」
麻衣「グンジンショーギ? なにそれ、マリオカートみたいなもん?」

加茂(やばいっ! 押し入れを開けられてしまうっ……!!)

そのとき、ゆかりの父・義之が姿をみせた。「どうだ? 修羅場か〜?」

大江「もう父さん、なんの用なの」
義之「あれれ? ケイちゃんはどこ行った? てっきり三人だと思ってたのに……」
大江「さっきからケイちゃんケイちゃんって、いったいなにを云ってるのさ?」
義之「おかしいなあ……? まあいいや。ゆかり、ピンクレディのつぎはマナカナの登場だぞ」
大江「マナカナ……?」

ほのぼのとめはね……

不意に現れた日野姉妹。
その鏡像の女神のようなたたずまいに、ゆかりたちは度肝を抜かれた。

大江「ぶ、部長さん……どうしてボクの家に?」
麻衣「日野部長……(どっちがウチの部長だろう?)」

よしみ「これはこれは……宮田麻衣サン、入部して一月たらずで、もう他校の男子をたらしこむとは」
麻衣「(こっちか)……違うんですっ、日野部長!」
よし「スパイ活動の一環としても少々品に欠けるところだな。勅使河原が知ったらどう思うだろう」
麻衣「そっ、それだけはご勘弁を!」

加茂(あっ! このオンナ、鵠沼の一年か。たしかビリっけつの21位だった……)

ひろみ「大江くん、失望しました」
大江「部長さん、これには複雑ないきさつというものが……」
ひろ「たしかにうちの部で、あなたの扱いにはイロイロ行き届かない点があったと思う」
大江「誤解なんです。ボクと麻衣ちゃんはまだそんな……」
ひろ「まだ?」
大江「いえ……」
ひろ「でもお願い、これだけは分ってほしいの。いま書道部は問題をおこすワケにはいかないのよ」
大江「はい……」
ひろ「不純異……イエ、不祥事なんかで甲子園にイケなくなったら、はずかしいと思わない?」
大江「その通りです」
ひろ「望月さんには黙っておきます。彼女もインターハイ直前で微妙な立場だから」
大江「すいません……」

そのとき、ふたたびゆかりの父・義之が姿をみせた。「修羅場おわったか〜」

大江「と、父さん……(さすが修羅場馴れしてる人だ)」
義之「お〜、これだけ女子高生がそろってると、夕焼けニャンニャン思い出すなあ!
   真ん中もっこり水曜日! メロン切ったから、みんな下においで〜!」

ほのぼのとめはね……

ゆかりたちは、メロンのいい匂いにつられてワイワイと部屋から出ていった。
日野姉妹の片方だけが遅れて、辺りをうかがっていたかと思うと、おもむろに押入れを開け放った。

日野「——杏子、見っけ」
加茂「よ、よしみぃ……」
日野「ひどい顔してるな。おまえは幼稚園のころから隠れん坊がヘタっぴだった」
加茂「そういうおまえは天才的なオニだったっけ……いや、悪魔か」
日野「ぬかせ。この靴を履いて、窓から失せろ。あとはうちら姉妹でなんとか収拾しておく」
加茂「……貸しにしといてやるぜ」
日野「それはこっちのセリフだっての」

窓から逃れ、塀も乗りこえると、三輪が腕組みしながら待っていた。「お疲れちゃ〜ん」

加茂「みっ、三輪ちゃぁぁん! うわあああ……」
三輪「おおヨシヨシ、思いっきり泣くがイイさ。タイヘンな一日だったもんね」
加茂「ぐすっ、ヒドいよ、三輪ちゃん。なんで一緒に来てくれなかったのさー?」
三輪「悪い悪い。ゆかりちゃんといいムードにしたげようと思ってさ……」
加茂「ナイスムードだったのは鵠沼のあの一年生だけだよ!」
三輪「それなのよ! 街でゆかりちゃんとあの一年がキャピキャピ歩いてるのを見かけて……」
加茂「キャピキャピってのも古いな、わかるけど……」
三輪「で、これは加茂ちゃんピンチ!と思って、急きょ二年生パワーを集結したってワケ」
加茂「持つべきモノは旧友か……ぐっすん」
三輪「そうそう。鈴里幼稚園スイカ組をナメるなよ、と」

つぎの登校日……

大江「あっ、加茂センパイ、お久しぶりのおはようござ……」
加茂「ゆかりぃっ! 歯をくいしばれ!」

バチーン!

大江「ひ、ひどい……いきなりなにを……?」
加茂「あと、これはお土産だ。うけとけホレ、重いぞ」
大江「スイカじゃないですか……ビンタとスイカ……意図がさっぱりわからない?」
加茂「いいか、ゆかり、スイカは甘くとも、世の中はそんな甘くないんだからな!」

三輪「……よかった、加茂ちゃん、いつもの加茂ちゃんに戻ったみたい〜」

がんばれ加茂ちゃん激闘編・完 ほのぼのとめはね……

大江「毎度ありがとうございました〜……」
麻衣「お父さん、ランチのお客さんみんな帰ったよ!」
店主「おう、おつかれさん! よし、千円やるから、どっかで腹ごしらえしてきな」
大江「あ、いつもありがとうございます」
麻衣「大江くん、いこっ!」

麻衣「またあそこのジェラートにしよっ」
大江「ボクできればガッツリ牛丼とか食べたいんだけど……」
麻衣「ダイエット中だからダメっ。あそこのジェラートは豆乳使っててヘルシーなんだから」
大江(あしたから別行動にしてもらおうかな)

麻衣「ラムレーズン美味しい! ねえねえ、きょうのランチ、わりとヒマだったよね」
大江「そうだね、もうすぐお盆もおわりだしね……」
麻衣「夏休み終わったらどうすんの、バイト?」
大江「どうしよう、部活あるし」
麻衣「続けようよ〜。大江くん辞めたら麻衣サミしいよ。お父さんも残ってほしいって」
大江「あ、キモチはうれしいです……」
麻衣「ねっねっ。土日だけでも!」

ゆかりは、きのう休憩中にバッタリ会った望月の険しい顔を思い出していた。
(どうしようかな……。どうせ土日はあんまり望月さんと書道部で会えないしな)
(なんだかんだいって、麻衣ちゃんと一緒に仕事してるの楽しくなってきたし……)

大江「じゃあ、バイト続けようかな、週末だけ……」
麻衣「やった! あ、文化祭とか試験中とかはちゃんと休みを考慮するからさ。土日手当もあるし」
大江「ウマいこといって、またボクひとりだけ働かせようって魂胆じゃないよね?」
麻衣「大丈夫、夏休み終わったら浅田さんが出てくれるようになるから」
大江「あ、浅田さん?」
麻衣「超巨体のパートのオバちゃんだよ! トロいしワキガだし注文まちがえるし、もー最悪。
   麻衣あんまりいっしょに働きたくなかったから、大江くんが代わってくれて助かるぅ!」
大江「……」

ほのぼのとめはね……
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