ゆかりたちは、メロンのいい匂いにつられてワイワイと部屋から出ていった。
日野姉妹の片方だけが遅れて、辺りをうかがっていたかと思うと、おもむろに押入れを開け放った。
日野「——杏子、見っけ」
加茂「よ、よしみぃ……」
日野「ひどい顔してるな。おまえは幼稚園のころから隠れん坊がヘタっぴだった」
加茂「そういうおまえは天才的なオニだったっけ……いや、悪魔か」
日野「ぬかせ。この靴を履いて、窓から失せろ。あとはうちら姉妹でなんとか収拾しておく」
加茂「……貸しにしといてやるぜ」
日野「それはこっちのセリフだっての」
窓から逃れ、塀も乗りこえると、三輪が腕組みしながら待っていた。「お疲れちゃ〜ん」
加茂「みっ、三輪ちゃぁぁん! うわあああ……」
三輪「おおヨシヨシ、思いっきり泣くがイイさ。タイヘンな一日だったもんね」
加茂「ぐすっ、ヒドいよ、三輪ちゃん。なんで一緒に来てくれなかったのさー?」
三輪「悪い悪い。ゆかりちゃんといいムードにしたげようと思ってさ……」
加茂「ナイスムードだったのは鵠沼のあの一年生だけだよ!」
三輪「それなのよ! 街でゆかりちゃんとあの一年がキャピキャピ歩いてるのを見かけて……」
加茂「キャピキャピってのも古いな、わかるけど……」
三輪「で、これは加茂ちゃんピンチ!と思って、急きょ二年生パワーを集結したってワケ」
加茂「持つべきモノは旧友か……ぐっすん」
三輪「そうそう。鈴里幼稚園スイカ組をナメるなよ、と」
つぎの登校日……
大江「あっ、加茂センパイ、お久しぶりのおはようござ……」
加茂「ゆかりぃっ! 歯をくいしばれ!」
バチーン!
大江「ひ、ひどい……いきなりなにを……?」
加茂「あと、これはお土産だ。うけとけホレ、重いぞ」
大江「スイカじゃないですか……ビンタとスイカ……意図がさっぱりわからない?」
加茂「いいか、ゆかり、スイカは甘くとも、世の中はそんな甘くないんだからな!」
三輪「……よかった、加茂ちゃん、いつもの加茂ちゃんに戻ったみたい〜」
がんばれ加茂ちゃん激闘編・完 ほのぼのとめはね……
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