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ほのぼの○○……
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三輪「あら、ゆかりちゃん、顔面蒼白」
大江「み、三輪先輩……マジでヤバいんです、助けてください」
三輪「あたしを頼ってくるなんてレアケースねぇ。いいわよ、聞かせてもらおうじゃない」
大江「めっちゃ怒ってるんです……加茂センパイが」
三輪「あらら」
大江「昼休みに、いつものようにパンを買いに行かされたんです」
三輪「加茂ちゃんの大好物っていったらコロッケパンね」
大江「それが間違って焼そばパンを買ってしまったんです」
三輪「どうやったら間違えるのよ……」
大江「しかも、おつりのお金を途中で落としてしまって、30円」
三輪「ドジねぇ。でも、そんぐらいで加茂ちゃん怒るかしら」
大江「歯をくいしばれ!と云われたから、よけようとして、とっさにセンパイの胸を……」
三輪「えっ、揉んじゃったの?」
大江「不可抗力で……思ったより柔らかかったけど……」
三輪「ほんとにウッカリぃ? でもまあ、そりゃ加茂ちゃん怒って当然だわな」
大江「いまもボクを目の色を変えて探してるんです。捕まったら殺されちゃいます」
三輪「それであたしに助けを求めにきたわけだ」
大江「はい……お願いします」
三輪「そうねえ。とりあえずきょうの部活はお休みなさいな。頭を冷やす時間が必要だから」
大江「わかりました」
三輪「それで明日はおわびになにかオミヤゲをもってきなさい。ケーキとか団子とか」
大江「ううっ、やはり甘いモノが効きますか」
三輪「あとはなんとか、あたしがウマイこと云って丸くおさめておくからさー」
大江「お願いします……頼りにしてます」
三輪「じゃあ、ハイ」
大江「……なんですか? この手は」
三輪「相談料。3000円でいいわ」
大江「ボクそんなに手持ちが……」
三輪「なんなら、ゆかりちゃんが加茂ちゃんを押し倒したって、望月さんに報告してもイイけど?」
大江「……」

ほのぼのとめはね……
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加茂「わたし、メガマックのセット、コーラで」
三輪「マックフルーリーのオレオと、ナゲット。バーベキューソース」
日野「三角チョコパイとアイスコーヒーください」
加茂「……二階にする? 禁煙席あいてるかな」
三輪「あ、あそこの窓際にしましょう」
日野「いただきまーす」
加茂「いやー、きょうの部活もつかれたなー」
三輪「ほんとね。甘いもののおいしいコト」
日野「甲子園もまじかだからね。弱音吐いてる場合じゃないよ」

隣の客(えっ? この子たち高校球児!?)

加茂「おっ、窓のそと見てみろよ。望月がまた男と歩いているぞ。久我だ」
日野「柔道部の帰りね」
三輪「あの子もよくやるわね〜。月水金はボウズの子で、火木土はゆかりちゃんか」
加茂「ふたりを手玉にとって……いや鵠沼のイケメンもいるから、三人だな。悪女め」
日野「いったい誰が本命なのかしら?」
三輪「恋愛なんかしてる場合じゃないってのが実際のトコじゃないの?」
加茂「そうだな……、マジで忙しそうだからな、あいつ」

三人は、窓に映る自分らの顔を見つめた。
(なんであんな忙しい人間がモテて、あたしらみたいなマックで
 ヒマつぶしている人間にはオトコができないんだろう……)

加茂「すこしは分けろよな……」
三輪「あっ、ごめん、ナゲット食べていいよ」
加茂「え? 違う違う。そーゆーコトじゃないって」
日野「いろんな意味で疲れてるみたいね、私たち」
三輪「そうね、笑ったほうがいいわ。スマイルゼロ円っていうし」
三人「いっせいの……ニコー」

ほのぼのとめはね……

加茂「こんちわー……って、ずいぶん過疎ッてるな、きょうの部室」
大江「あ、こんにちは、加茂先輩」
加茂「ゆかりだけ?」
大江「望月さんは柔道部の日で、三輪センパイはバイトの面接だとか……」
加茂「日野ちゃんはさすがに遅れてるだけだよな?」
大江「部長さんは、妹さんが高熱を出されたそうで、その看病のため急いで帰りました」
加茂「うへー、まじかよ。わたしも帰ろうかなぁ〜」
大江「ぼくは練習していきます……」
加茂「優等生だなあ、しょうがない、ちょっくら付きあうか……」

大江「……」
加茂「……なに書いてんだ、ゆかりは」
大江「雁塔聖教序です」
加茂「またかいな」
大江「書けば書くほど奥深くなっていきます。スゴい書家ですよね、チョ遂良……」
加茂「あそう、ふーん」
大江「ぜんぜん興味なさそうですね……先輩はなにを書いてるんですか」
加茂「少林少女」
大江「あ、もう観たんですか?」
加茂「けっこう面白かったよ。クローバーフィールドもよかったけど、半紙に収まらんからなあ」
大江「ですね……」

大江「……」
加茂「……なんかしゃべれよ、ゆかり」
大江「え? 集中できません……」
加茂「三人以上だと気にならないけど、二人っきりでダンマリは息が苦しくなってくる」
大江「そんなこと云われても、話題なんて……」
加茂「つまんねー男だな。それ以上黙ってるんなら、帰っちまうぞ!」
大江「……」
加茂(ガーン! 帰ってもイイってか!?)

ほのぼのとめはね……

大江「おはよーございます……」
宮田麻衣「あっ、オハヨ!」
宮田父「おう、きょうも頼むぜ」
大江「はい、足手まといにならないようにガンバリます」
麻衣「わたし開店時間までワイドショー見てるから、大江くんは父さんほうの仕込み手伝っててよ」
大江「あ、うん……」

大江「えーっと、ネギを刻んで、おわったらゴボウのささがきと……」
宮父「おっ、なかなか包丁さばきがサマになってるじゃないか」
大江「父子家庭でしたから……父が仕事のあいだはボクが食事のしたくを」
宮父「ほう、それは感心だ。うちの麻衣に爪の垢を煎じて飲ませてやりたいぐらいだ」
大江「つ、爪の垢ですか……わかりました」
宮父「待て待て! 言葉通りに受けとるな、見習わせたいという意味の慣用句だ。手を洗ってこい」
大江「あ、すいません……日本語がまだ馴れてなくて」
宮父「履歴書の帰国子女ってのは本当だったな。まあ、麻衣の英語の家庭教師もよろしくなっ」
大江(一方的に英語の宿題を手伝わされてるだけなんですが……)

麻衣「父さんたち、仕込み終わった? あと五分で開店だよ」
宮父「おう、大江くんが手伝ってくれたおかげでバッチリだ。もうのれんを出していいぞ」
麻衣「お茶のセッティングも完璧じゃん。一日で仕事覚えちゃうなんて大江くんって使えね?」
大江「はは……そんなに誉められると後頭部がかゆくなります」
麻衣「ダメだよ頭かいちゃ! もう一回手を洗ってきて!」
大江「あ、しまった……」
麻衣「しかし、父さん、いいバイトを見つけたよね。麻衣もういらないんじゃない?」
宮父「ハハハ、そうだな。すぐお駄賃をねだる麻衣とは違って、バイト代もいらないからな」
大江「……すいません、いま聞き捨てならない会話がかわされたような気が……」
麻衣「あれー? あなたのお父さんから聞かされてないの? 契約のコト」
大江「は? 契約?」
宮父「きみの親父さんな、うちにツケがあるんだよ、6桁ほど……二週間で返してもらうから」
大江「……」

ほのぼのとめはね……

大江「麻衣ちゃん、5番テーブル下げ膳して! おあと4名さまご案内」
麻衣「はっ、はい」
大江「お父さん、2番さまの冷し天ソバがまだ出てません、お急ぎで!」
親父「あいよっ、お待たせ!」
大江「提供いきます! おあと、たぬき温うどんと親子丼一丁!」
麻衣「大江くん、英語のお客さん来ちゃった、お願い……」
大江「了解、じゃあレジかわってくれる……キャナイ・ヘルプユー?」

大江「ありがとうございました〜……」
麻衣「よしっ、ランチタイム終了っと! お父さん、のれん下げるよー」
親父「おう、おつかれ! きょうのピークはスゴかったな。売上新記録かもしれん」
大江「疲れましたね……」
親父「大江くんの接客は、バイト二日目とは思えんな。ほんとは経験あんじゃないの?」
大江「いいえ……でも、母が昔ウェイトレスやってたそうです」
麻衣「スイッチ入るとヒトが変わるよね。こっちはてんてこまいだったよ」
大江「麻衣ちゃんだけに……はは」
麻衣「……」
大江「……」
麻衣「そ、そういえば、いつのまにか私のことチャンづけで呼んでたね」
大江「えっ! ああホントだ……ごめんなさい」
麻衣「なんで謝るの? 呼びやすいんだから麻衣ちゃんでイイよ」
親父「そうだな。「宮田さん」だと、オレや母さんが呼ばれてるのかと思うしな」
大江「はは、わかりました……じゃあよかったら、ボクのこともチャンづけでどうぞ」
麻衣「大江くんって、したの名前なんだっけ?」
大江(ガーン、覚えてなかったのか)「ゆかりですけど……」
親父「ゆかり? がはははー。女の子みたいな名前だな!」
麻衣「ゆかりちゃんかあ……やっぱり大江くんのほうが呼びやすくね?」
大江「うう、お好きにどうぞ……」
親父「あとな、大江くん、オレのことお父さんって呼ぶのはやめてくれ。まだ早いぞ」
大江「あ、ハイ、気をつけます……」

ほのぼのとめはね……
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