ついに結婚式当日……
影山「おおおおい、おおおおおお大江、おおおお落ち着けよ」
大江「先生こそ落ち着いてください。仲人でしょ」
三輪「紋付袴が決まってること、かっこいいよ、ゆかりちゃん」
大江「ありがとうございます」
日野「とても頼もしい感じ。これなら加茂ちゃんを任せられるわ」
大江「もうここまで来たら開き直るしかないです」
三輪「これで望月さんが来たら、ひさびさに鈴里書道部メンバーがそろったのにねぇ」
日野「そうね、お花と祝電はきてるみたいだけど」
大江「…………」
三輪「それにしても新婦おっそいわねー」
日野「ほんとに。時間か会場を間違えてるのかしら」
三輪「身重なんだから、よゆうをもって来なさいといったのに……」
「ワホ! ワホ!」
大江「あれっ、ピースじゃないか」
三輪「望月さんが来れないかわりに、犬が祝福にきたってこと?」
日野「違うみたいよ。首輪に手紙がついている……大江くん宛よ」
大江「えっ? 加茂先輩からですか?」
ゆかりは開封した。
「——ゆかりへ。
これを読んでいるころ、わたしはどこかの線路のうえを走っているだろう。
行き先は教えられない。
これからは一人で……いやお腹の子と二人でひっそりと生きていくつもりだ。
おまえには迷惑をかけっぱなしになってしまった。
式場に来てる方々にも身勝手をわびてほしい。最後のお願いだ。
憎まれてもしかたがない。ほんとうに申し訳なかった。
そして、それ以上に、ゆかりには感謝の気持ちを伝えたい。
今朝、結婚式の当日をむかえるまで、ほんとうにわたしは幸せだった。
高校生のころからずっと想いつづけてた人と結ばれる——こんな幸せがあるだろうか。
卒業しても、借金のふりをして、ずっとおまえに連絡を欠かさなかった。
赤ちゃんをつくったのも、なんとしてもおまえと家庭を築きたかったからだ。
わたしのやりかたは強引すぎて、おまえには迷惑だったに違いないけど……
そして今朝、やっとわかった。
やはり、ゆかりはわたしと結ばれるべきではない。
ゆかりには、もっとふさわしい人がいる、と。
ゆかりへの愛が深すぎるがゆえに、こんな簡単な真実に気づくのに時間がかかってしまった。
借金は返す。というか、おまえから預かっていた金はビタ一文使ってない。
結婚生活のために貯めておいたのだ。それどころか競馬やパチンコで少し増やしてある。
同封してあるカードでおろしてくれ。
最後に、この半年間の幸せをありがとう。さようなら」
大江「おい、ピース……」
白獣「ワホ! ワホ!」
大江「この手紙どこで渡された? いますぐそこへ連れてってくれ!」
白獣「ワホーン!」
おどろくひとびとを尻目に、ゆかりとピースは走りだした…… ほのぼのとめはね……
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