砂に書いた名前消して、波はどこへ帰るのか……
望月「覚えてる? この砂浜」
大江「もちろん……」
望月「7年前、ここに私の名前が大きく書かれてるのを見て、書道部に入ろうと思ったんだ」
大江「ごめん」
望月「アハハ。なんで謝るのよ」
大江「……」
望月「こっちこそゴメンね。明日の式に出席することができなくて」
大江「海外で強化合宿があるんじゃ、しょうがないよ」
望月「つぎに会うときは、もう大江くんって呼べなくなってるのかぁ……」
大江「加茂ゆかり——ゆりかもめみたいでヘンでしょ」
望月「アハハ……」
大江「……」
望月「……いまはもう八か月だっけ」
大江「……うん。おかげさんで」
望月「ウェディングドレスたいへんじゃない?」
大江「日に日におなかが大きくなっているからね。それに加茂先輩じたいが、食う食う」
望月「わたしは減量で苦しんでるから、うらやましいよ」
大江「それにしてもあんなに太るとはなぁ……」
望月「もう男の子か女の子かわかってるの?」
大江「いや、聞かないようにしてるんだ。名前だけは決めてあるけど……」
望月「どんな名前?」
大江「男ならススム。女ならユキ……」
望月「えーっ!? わたしと一緒?」
大江「加茂先輩が決めたんだ……CR宇宙戦艦ヤマトがどうとか……」
望月「そうなんだ……大江くんが決めたわけじゃないのか」
大江「ごめん……」
望月「……」
大江「……」
望月「……名前といえばさ」
大江「うん?」
望月「私のラブレターの話って覚えてる? 差出人が消えてたヤツ」
大江「うん。覚えてるよ。……それが?」
望月「その差出人、大江くんだったらいいなって、ずっと思ってた」
大江「……!」
望月「アハハー! このコトだけどうしても伝えておきたくて、今日は呼びだしたのだ」
大江「も、望月さん……」
望月「それだけ! じゃあ加茂先輩と末永くお幸せにね。バイバイ!」
大江「…………」
ざざーん…… ほのぼのとめはね……
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