コンコン……
父「ゆかり、入るぞ……」
ゆ「……」
父「真っ暗じゃないか。灯りぐらいつけろよ」
ゆ「やめてよ。泣き顔を見られたくないんだ」
父「……」
ゆ「……」
父「その、えーと……、本当にすまなかった、ゆかり……」
ゆ「……」
父「おまえの大事なマザーグースの絵本……あれは母さんが最後に買ってくれた本だったな」
ゆ「いいよ……べつに」
父「それに、ついカッとなって、手をあげてしまったコトも謝る」
ゆ「……」
父「おまえを引きとるって決めたとき、決して暴力を振るわないと誓ったはずなのに……」
ゆ「イイってば。ボクも悪かったし……」
父「父さんは、最低の父さんだな」
ゆ「そんなコトないよ。ぼくにとっては唯一無二の最高の父さんだよ」
父「……」
ゆ「父さんにヒドいことを云ってしまって、ゴメンナサイ……」
父「ゆかり……」
父はぎこちなく息子の肩を抱いた。息子は黙ってそれを受け入れた。
父「あのな、ゆかり、あのあと父さんすぐさま神田に走ってな……」
ゆ「ええッ? マザーグースを買い戻してきたの? ほんとに!」
父「ハハハ、売ったときの三倍ほどの値段になってたけどな」
ゆ「わあ! 父さんスゴいや、アイ・ラブ・マイ・ダディ!」
父「5年ぶりぐらいに聞いたな、そのセリフ。ついでにどうだ? 久しぶりに一緒に風呂でも入るか」
ゆ「えー。それはイイや……」
ほのぼのとめはね……
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