桜子「あー、スイマセン、ちょっくら前を通らせてもらいますよ……」
粉川「イテっ! おいコラ、足を踏んだぞ、ネエちゃん」
桜子「なによッ、足を投げだして座ってるそっちが悪いンでしょ!」
粉川「……って、おい?」
桜子「あれ……もしかして巧くん?」
粉川「海老塚かよ……」
桜子「どこのヤクザかと思った。サングラスとりなさいよ。柄わっるい」
粉川「ちッ……あいかわらずだなぁ」
桜子「となりの席、空いてるンでしょ。座るわよ」
粉川「勝手にどーぞ」
桜子「フフン。まさか立体大の監督さんが、こんな高校生の地区予選から見学にきているとはね」
粉川「そういう東都女子大さんのスカウトもご熱心なコトで」
桜子「云っておきますけど、望月結希に最初に目をつけたのはウチですからね」
粉川「早いもの勝ちってワケじゃないだろう……」
桜子「遠慮してよ。立体大には麻理ちゃんがまだ現役でがんばっているじゃないの」
粉川「あいつの栄光はもはや過去のものだよ……ロンドンまでなんてとても……」
桜子「薄情なのね……ずっと一緒に柔道やってきた仲間なのに」
粉川「臨機応変といってくれ」
桜子「そんな薄情だから、保奈美のコトも……」
粉川「おいおい、彼女のコトを蒸しかえすのはヤメてくれよ」
桜子「巧くん、シドニーのときから変わったよね」
粉川「……」
桜子「柔道だって、あんなに一本にこだわっていたくせに……たしかに金はとったけれど……」
粉川「しかたないだろ。あーゆーポイント重視の戦いかたが、これからのスタイルなんだよ」
桜子「望月結希にはそんな柔道をやらせませんからねッ」
粉川「そんなに尖るなっての……おまえは中学ではじめて会ったときから変わンねーな、まったく」
桜子「……えっ」
粉川「このあと予定はあんの? よかったらどっかで飲みながら思い出でも語らない? あははー」
桜子(くっ、この屈託ない笑顔……十五年たってなお、私に女を思い出させる……悪党ッ)
ほのぼのとめはね……
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