よしみ「……はあ……はあ……あふっ」
ひろみ「よしみー、いるの?」
よしみ「わあっ! ノックもせずにひとの部屋に入ってくるな!」
ひろみ「……」
よしみ「……」
ひろみ「暑いの?」
よしみ「なんで?」
ひろみ「だって下着を半脱ぎしてるし、顔も上気してるし……」
よしみ「そういうワケでは……」
ひろみ「……」
よしみ「……」
ひろみ「……ああ、オナってたの」
よしみ「あっけらかんと云うな!」
ひろみ「わー! よしみってどうやんの? 興味津々」
よしみ「子供は知らなくていいんだ!」
ひろみ「まったくの同い年なんですけど……えっ、もしかしてこの筆を使ってるの?」
よしみ「まあな、この柔らかい穂先で……こことか……アンっ……ここを……はぁはぁ」
ひろみ「もうやめてよ、よしみっ」
よしみ「……ひろみ」
ひろみ「大切な書の道具をそんなふうに使うなんて、間違ってるよ、最低っ!」
よしみ「……そうか……そうだな……最低だ、わたし……」
ひろみ「筆はこうやって逆にもってズボズボってやると気持ちいいんだから!」
よしみ「なんでそんなにすんなり入るんだよ!?」
素敵なホワイトデーを……もっこりとめはね……
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勅使「……部長」
日野「なんだ」
勅使「合宿のときは、うまいこと鈴里の連中をはめてやりましたね」
日野「まあな」
勅使「いまごろ時間との戦いに焦りまくってるでしょう……くすくす」
日野「ぎりぎりまで甲子園の件は伏せておいたからな」
勅使「もうこれで連中の夏休みはパアですね」
日野「加茂と三輪もバイトなんてしてる場合じゃないだろう。いい気味だ」
勅使「部長はホントあのふたりのこととなると目の色が変わりますね」
日野「ふふん……。おまえこそ、あのトロそうな男子部員にずいぶん粘着してるじゃないか」
勅使「望月結紀の周辺から、邪魔な虫けらを排除しようとしてるだけですよ、慎重にね」
日野「ははあん、それで一年の新人女子を急に連中のとこへ差しむけたわけだな」
勅使「さすが部長、ぼくの策などお見通しですね」
日野「しかしウマくいくかな。あのトロ男子、そうとう奥手っぽいぞ」
勅使「既成事実をつくってしまえば、こっちのものです」
日野「よし。尻尾をつかまれないよう、うまくヤレよ」
勅使「お任せください……」
副部長以下ほかの部員たち。
(まーた、ふたりでヒソヒソやってるよ)
(仲いいよね、あのふたり……)
(つきあってんじゃね?)
ほのぼのとめはね……
勅使「部長、お聞きしてよろしいですか?」
日野「なんだ」
勅使「じっさいのところ部長は、お姉上のひろみさんに勝ったことがあるのですか?」
日野「……うっ」
勅使「市民大会でも、合宿でも……」
日野「……ぬぬ」
勅使「駅前パフォーマンスのときも鈴里のほうが評判よかったですよね」
日野「う、うるさいっ。中学まではぜんぜん私が勝っていたさ!」
勅使「どんな実績があったのか教えてください」
日野「急に教えることはできないが……ともかく昔は、技のよしみに力のひろみと呼ばれていた」
勅使「それじゃあ判断できないな……ぼくは実力のない人の下につくのはヤですからね」
日野「無礼者が! ならば訊くがな、おまえは書道はじめて何年だ?」
勅使「ぼくは小学校にあがってからですから……9年……ぼちぼち10年ですね」
日野「ははは。10年の経験あるヤツが、3か月のヤツと接戦をくりひろげるとは笑止!」
勅使「くっ……」
日野「本当の才能とは、あの鈴里の1年坊に宿っているものみたいのを云うんじゃないか?」
勅使「痛いところを……」
日野「わたしこそ、才能のない部下なんてお断りだからな、足手まといめ!」
勅使「でしたら云わせてもらいますけどね、部長!」
日野「おう、云ってみろ!」
副部長以下ほかの部員たち。
(まーた、やってるよ)
(ケンカ?)
(いや、あーやって互いをなぐさめあってるらしい)
(ふたりともドSに見えて、じつはドMだからねー)
ほのぼのとめはね……
ミーンミンミーン……
加茂「おはよー……って、なにこのクソ暑い部室!?」
三輪「おはよう、加茂ちゃん。全館クーラー調整中だってさ」
加茂「マジっすか。どうせ遅刻なんだから、ウチで寝てればよかった……」
日野「だめよ、書道甲子園のしめきりも近いし」
望月「そうですよ。がんばってみんなで中国へいきましょう!」
加茂「がんばるって一番キライな言葉なんだよ……。あれ、今日の一年坊は望月だけか?」
望月「大江くんは法事でお休みです。おじいちゃんの墓参りとか」
加茂「ああ、そう。なんかあいつがいないと調子狂うな」
三輪「そうね。久しぶりに女だけの書道部よね」
望月「なんか新鮮ですね!」
加茂「そうかそうか。女だけか……ではこんな恰好でも大丈夫だな!」
日野「わっ、加茂ちゃん! またそんなハシタない姿に……」
加茂「だって暑いじゃーん。部活終わったらプールで泳ごうと思ってさ。ちょうどいいや」
三輪「わたしもキャミに着替えよう」
望月「じゃあ、わたしも柔道用のTシャツになります」
日野「うう……みんなが脱ぐなら、わたしもタンクトップに……」
加茂「ああ開放感……」
日野「なんだかんだいって、大江くんがいると気をつかってたのね、わたしたち」
三輪「あんなでも男のハシクレだからねー」
加茂「望月、気をつけろよ、たまにあいつヘンな目でおまえを見つめてるぞ〜」
望月「やめてくださいよ」
日野「まあ、かわいい弟ってカンジよね」
加茂「それにしても暑いな……ゆかりがいればアイスを買いにいかせてるのに」
望月「じぶんが行ってきましょうか?」
加茂「いや、いいんだいいんだ。こういうのは男に行かせるから味があるのだ」
三輪「怖いわよね、女って」
全員「あははのはー」
大江(ん……。なんでこんな真夏日に寒気がするんだ? おじいちゃんお守りください……)
ほのぼのとめはね……
影山「どうだ、調子は〜?」
大江「……」
影山「む、無視……まあ集中してる証拠と思おう……」
望月「あー! また失敗した!!」
影山「またか、望月、4本もムダにして」
望月「あははー。先生、新しい石をください」
影山「タダじゃないんだからな、もっと慎重に掘れよ」
望月「そっちのキレイな石はなんですか」
影山「ダメだこれは! 高いんだぞ。初心者には沈陽凍石で十分だ」
望月「先生、月という字がキレイにできません。ぐにゃっと曲がってムツカしい……」
影山「そうだな。望月のなまえには月がふたつもあるから大変だな」
望月「コツをおしえてください!」
影山「カラダをつかえ、カラダを」
望月「またそれですか。あーあ、大江くんは字面がシンプルでいいな」
影山「そのわりには時間がかかってるな……って、うわー、なんだそれ大江!」
大江「あ……これですか。ハハハ。上半分に中国のお城を掘ってみました」
望月「ちょっ、すごい器用ね。それにしてもお城マニア?」
影山「これは初心者とか、そういう域を超えてるな……」
大江「はは……。そんな誉められると後頭部がかゆくなります」
影山(もとは500円の石だけど、ヤフオクで5千円で売ってもおかしくない。……よし閃いた!)
大江「な、なんですか? 先生、その大量の石をどうしろと……」
影山「大江、おまえに学校公認でアルバイトをさせてやるぞ。1本千円で手を打とう」
大江「うわっ、ほんとですか! やりますやります」
影山(うは。こどもだな。チョロいもんだぜ)
望月「あ、いいなー。あたしも手伝っていいですか?」
影山「おまえはさわるな!!」
ほのぼのとめはね……
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